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月別アーカイブ: 2025年8月

有翔工業のよもやま話~“黄金の48日”~

皆さんこんにちは!

有限会社有翔工業の更新担当の中西です。

 

~“黄金の48日”~

定修(シャットダウン)は、止めた瞬間からカウントダウン。安全・品質・期間を守りながら、確実に再立ち上げるための“型”を公開します。前工程の準備8割で勝負を決め、ゼロ災・ゼロ漏洩・ゼロパンチでの再稼働を目指しましょう。


1|T–90〜T–30:準備フェーズ(止める前が本番)

  • スコープ確定:回転機O/H、熱交洗浄、塔槽内点検、弁整備、配管取替、計装校正

  • WBS/ネットワーク:クリティカル経路、並列作業、足場/クレーン共用計画

  • 資機材:予備品(メカニカルシール、ベアリング、パッキン、ガスケット)、洗浄薬品、窒素

  • 人員計画:昼夜2交代、技能マトリクス、作業主任者の配置

  • リスク評価:酸欠・硫化水素・可燃ガス・高温・高圧—JSAと救出計画を事前承認

  • 許可と教育:PTW、LOTO、救命・消火訓練、密閉空間入域訓練

  • ベースライン写真:運転中の音・温度・振動値をログ化(比較用)


2|T–3〜T0:停止手順(安全に“止める”)

  • 逐次停止SOP:原料遮断→循環停止→冷却→ブロー→窒素パージ(不活性化)

  • エネルギー遮断:電気・圧空・蒸気・薬液をLOTOし、ゼロエネルギー確認

  • ガス検知:LEL/酸素濃度を入域前・作業中・復帰前に継続測定

  • 廃液・残渣管理:中和・希釈・一時保管をマニフェストで管理♻️


3|T+1〜T+30:定修作業本体(並列を制す)

  • 塔槽内点検:トレイ/充填物/内部腐食、ノズル摩耗、ライニング欠損を写真&寸法で記録

  • 熱交:チューブ抜け・詰まり・肉厚測定、水圧試験でリーク確認

  • 回転機:O/H、芯出し、オイルフラッシュ、振動基準の再設定

  • 配管:減肉部更新、サポートがたつき、塩ビ/FRPは亀裂重点

  • :分解清掃、シート交換、スプリング設定、インラインリークテスト

  • 計装:校正、レンジ見直し、インターロック試験(SIFはプルーフテスト

  • 塗装・保温:CUI(保温下腐食)対策、ドレン設置、識別ラベル更新

進捗は日次朝礼10分+夕礼10分でKPI(出来高%、災害ゼロ、パンチ数)を共有


4|品質と安全の“ダブルロック”

  • ITP:各工程の検査タイミング(立会い/自主/第三者)を固定

  • コンファインドスペース管理:換気量、連続ガス測定、引揚装置、待機員のロール明確化

  • 火気作業:ホットワーク許可、火花養生・消火器・防火監視

  • 高所作業:先行手摺・フルハーネス・墜落制止器具点検

  • 環境:廃液/廃油/汚泥/スケールの分別・分析・処分記録


5|T+31〜T+40:系統復旧と試運転前検証

  • リークゼロ確認:耐圧→気密→石鹸水/ヘリウム(必要に応じ)、フランジ増締め

  • フラッシング:油/水/薬液系のクリーン度確認(ISOコード/導電率/濁度)

  • インターロック:E-STOP、PSHH/PSLL、LSHH/LSLL、火災・ガス検知の横断試験

  • O&M更新:手順書・点検表・予備品リスト・図面Revを最新版


6|T+41〜T+48:再立ち上げ(Start-Up)

  • 冷態→温態→負荷上げを段階実施、運転員がパラメータ目標を握る

  • 初期不良の芽摘み:振動・温度・圧力・流量の逸脱に即応

  • パンチクローズ:A=即修、B=短期、C=計画保全へ移管

  • 事後レビュー:安全・品質・工程・原価の反省と次回改善を1週間以内に実施


7|そのまま使える“定修パック”チェックリスト ✅

書類類

  • WBS/ネットワーク & クリティカル経路

  • PTW様式/LOTO手順/救出計画/ガス測定記録

  • ITP・試験成績書テンプレ・パンチリスト

現場

  • 足場・クレーン・照明・換気の仮設完了

  • ガス検知器・酸素濃度計・救命器具・消火器

  • 予備品・消耗品・盲板セット・窒素ボンベ

試運転

  • I/O完了、リークゼロ、インターロック合格

  • SOP更新、運転員教育、初期保全計画


ポイント

定修のカギは前倒しの可視化
スコープ確定→WBS→資機材→HSE→品質→試運転まで“黄金の48日”を型化すれば、ゼロ災・ゼロ漏洩・オンタイムが現実になります。

 

 

有翔工業のよもやま話~“止まらない”現場をつくる~

皆さんこんにちは!

有限会社有翔工業の更新担当の中西です。

 

~“止まらない”現場をつくる~

化学・食品・エネルギー・環境設備——多様なプラント工事の共通解は、**E(設計)・P(調達)・C(建設)・Cx(試運転)**を一本の線でつなぐこと。この記事では、品質・安全・工程・原価を同時に満たすための運用“型”を、すぐ現場で使えるチェック付きで解説します。✨


1|E:設計段階で勝負の7割が決まる ️

  • ベーシス設計:処理量、原料スペック、連続/バッチ、将来増設の余裕を確定

  • P&ID整流化:隔離弁・ドレン・ベント・計装取り合いを試運転手順から逆算

  • 3D/BIM連携:配管クリアランス、歩廊高さ、点検動線、クレーン旋回域まで干渉排除

  • 保全性設計:ポンプ抜き出しスペース、熱交チューブ抜きしろ、足場不要の点検を標準化

  • 材質選定:腐食線図、温度・圧力、クラック対策(SCC、低温脆性)を反映

  • HSE設計:防液堤、ガス検知、非常遮断、避難動線、防爆区分

  • 文書体系:図番規格、改訂ルール(Rev.管理)を最初に決める

メモ:試運転手順を先に書く→設計に戻す。 逆算で“実際に回る”仕様になります。


2|P:調達は“仕様×納期×トレサ”の三点固定

  • L1/L2/L3評価:価格だけでなく納期・品質保証・過去実績を数値化

  • キット化納入:系統ごとにボルト・ガスケット・支持材をセット化→現場ロス削減

  • ミルシート&MTR:ヒートNo.とタグNo.をデジタル台帳で一気通貫

  • 長納期品の前倒し:制御盤、特殊弁、回転機は前倒しFATで不具合潰し

  • 検査ポイント:第三者(TPI)/立会い検査/受入検査の**ITP(検査計画)**で見える化


3|C:建設は“段取り8割”の世界 ️️

  • エリア分割×系統優先:クリティカル経路(CP)を試運転系統から決める

  • 仮設計画:クレーン・足場・搬入動線・仮電・仮配管(ユーティリティ)を平面/断面で提示

  • 溶接・NDT:WPS/PQR→溶接者資格→溶接マップ→RT/UT/PT/MT→是正→再検

  • 配管クリーン度:フラッシング、ピックリング、オイルフラッシュ、ブローイングの基準化

  • 圧力試験:耐圧→気密→リーク→乾燥→窒素置換。ドレン位置盲板計画が鍵

  • 塗装・保温:膜厚管理、ラップ方向、ラベル/流れ方向矢印まで一体管理

  • 日次KPI:出来高(%)、安全KY、未解決パンチ、障害ログを毎朝10分で共有


4|Cx:プリコミ→コミッショニング→スタートアップ

  • プリコミ:I/Oチェック、ケーブルメガ、回転機芯出し、オイル循環、配管洗浄

  • コミッショニング:無負荷試運転→有負荷→インターロック試験→受入基準合否

  • スタートアップ:原料導入、定常化、SOP教育、初期不良の予防保全立ち上げ

  • パンチ管理:カテゴリA/B/Cで区分、**MOC(変更管理)**と連動しながらClose


5|HSE(安全)を“仕組み”にする

  • 許可制:高所・火気・酸欠・密閉空間・掘削・吊り荷はPTW(Permit to Work)

  • 隔離手順:LOTO(ロックアウト/タグアウト)→ゼロエネルギー確認

  • リスクアセス:JSA/KY→当日ハザード更新→指差呼称で現場定着

  • 非常対応:避難訓練、消火器・シャワー・洗眼の位置掲示

  • 記録:ヒヤリハット→是正→再発防止のKYTボードで共有


6|“紙と現場”をつなぐQMS(品質マネジメント)

  • **ITP/IR(検査要請)**の時系列運用

  • RFI/RFC:設計照会→回答→図面反映のリードタイムを測定

  • デジタル台帳:図面、チェックシート、写真、MTR、試験成績書をタグNo.紐付けで一元管理


7|今日から使えるチェックリスト ✅

事前

  • P&IDフリーズ/試運転手順ドラフト

  • クリティカル納期品の発注・FAT計画

  • PTW様式・LOTO手順の教育完了

施工中

  • 溶接マップ更新/NDT合格率>95%

  • 配管洗浄・試験の写真&成績書整理

  • 日次KPIと障害ログの是正期限設定

試運転

  • I/O100%確認/インターロック試験

  • パンチAゼロで引渡し

  • O&M引継ぎ、予備品・消耗品受領